ボツワナは、前政権与党がカタストロフィーという言葉がぴったりの大惨敗をしました。変わりに万年野党だったUDCが見事、政権を奪取しました。時期的に、アメリカ大統領選と被ってしまった結果、政権交代という文字だけが日本に伝わっただけで、日本の自民党も真っ青になるくらいのBDP(前与党)の負けっぷりまでは、あまり知られていないと思います。確認していませんが、モーリシャスでは、先日の選挙で与党の議席がゼロになったそうです。

話がそれましたが、それではどうしてBDPは歴史的大敗をしたのでしょうか。まず思い浮かぶのは、発展途上国にありがちな「 汚職に腐敗 」です。実際にある調査では、マシシ大統領政権(第5代大統領でBDP)はカーマ大統領政権(第4代大統領でBDP)と比べてより腐敗していると述べた国民の割合が増えていました。

しかし、それだけで、BDPの38議席が4議席まで減るでしょうか? 

地元紙では、この敗北の原因に関して、的を得ているなと思うところは多々ありましたが、「 一般国民はそんなところは気にしないでしょ 」と感じたので、もっと分かりやすい事例を2つだけ取り上げます。

1つ目は、マシシ大統領(当時)のデビアス社に対する振る舞いです。
ボツワナとデビアスは、かれこれ50年以上、良好な関係を築いてきました。Debswanaという会社を共同で設立し、デビアスはボツワナから良質なダイヤモンドを採掘して利益を上げ、その利益をボツワナが受け取って国の発展に役立てています。
ところが、前大統領はその関係に水を差すような発言を何度もしてきました。端的に言えば、「 いつでもこの関係を断ち切れるんだぞ 」という内容です。
デビアスがいなくなっても鉱山を国が運営できる、と彼は思っているのかもしれません。しかし、国民は基本的に、自分たちからダイヤモンドがなくなったら、生活が今以上に苦しくなって、このままだと本当に大変な事になるのを理解したのではないかと思っています。

2つ目は、今回の選挙に係る、マシシ大統領(当時)の挙動です。
ボツワナではどの政党も各選挙区で予備選を行います。東京一区で○○党から立候補するために、○○党内で勝ち上がる必要があるという事です。彼はとある選挙区に関して、予備選に勝利したBDPの候補をsuspendedにしたうえで、自分が(議員に)引き上げた別の候補を党の正式候補にしたという、「 それって予備選の意味ないよね? 」という事をやってのけました。ボツワナはdemocratic countryって言われるけれど、どこがですか、って言いたくなりました。
また、時期は忘れてしまいましたが、彼はあるビジネスマンのコミュニティとの会合で、「 (BDPに)お金を出さなければ、ボツワナは大変なことになるぞ 」と半ば献金を強要するような事も述べていました。

他にも要素はありますが、自分たちの生活が一向に良くならない中で、総じてみれば国民のほうを見ていない政治をマシシ前大統領以下BDPがこの5年間してきた、ということに国民が気付いたのかな、と思っています。