
米国のトランプ大統領が「こんな国の名前、聞いたことないぞ」と発言して、一部界隈から大批判を食らったために、ある意味有名になった(と思われる)レソト。別にあの時点であれば、日本の首相も知らなかったと思うのですよね(多分今は、TICADのために官僚からレクチャーを受けて、名前くらいは知っているはず)。
そんな南アに四方を囲まれ、日本では「天空の王国」と言われている(はずの)レソトが、大変な事になっています。
(引用かつ意訳)
レソトの繊維産業は最大の輸出産業で、国内民間雇用の約40,000人を支えている
(レソトの)シェリレ貿易相は、「悲しいことに、これ(関税15%)でも十分とは言えない…これでは雇用喪失につながる」
多数の米国輸入業者が発注をキャンセルし、大量解雇が発生した。
現在、一部の繊維メーカーは新たな市場を模索中
https://www.reuters.com/world/africa/lesotho-textiles-struggle-even-with-lower-15-trump-tariff-minister-says-2025-08-01/
米国がレソトに15%の関税をかけることに(ほぼ)決定しました。日本と同じ税率でしょうか。 レソトにとって(他国もそうですが)これが大問題となっているのには理由があって、レソトの主力輸出品(=外貨獲得のための品物)の1つが衣料品となっているからです。
実のところ、レソトの主な輸出品は、衣料品だけでなくダイヤモンドやミネラルウォーターも含まれています。そして、ダイヤモンドの輸出先はベルギーのみ(輸出関税はゼロ)で、全体でみた最大の輸出国は南ア(SACU内貿易につき、関税ゼロ)となっています。米国への主要輸出品は衣料品となっていて、これに関連して、皆さんが知っていらっしゃるとおり、今月上旬から米国は関税がかかるようになり(AGOAがどうなるのかは不明瞭)、レソトの衣料品に関税がかかる、すなわち繊維業界が大ダメージを受けることになります。
一方で、レソトの主要な輸出相手国は、南ア、ベルギー、及び米国となっていて、簡単に米国の代替となる国々は見つけられません。以上が、レソトが大変な状況に陥っている背景です。
では、この結果として何が問題になるのかというと、「労働集約型である繊維工業が打撃を受けることで、正規の労働者が大量に減ってしまう(可能性がある)」という事です。他に大きな産業がレソトにあればそちらに労働者が移動することで何とかなるかもしれませんが、最初に書いた通り、衣料品が主要輸出品目となっているため、それを補える産業はありません(鉱業はそこまで労働者を雇う必要がない)。ただでさえ、レソトの失業率は現状で2けたを超えています。
ここからは(こういう表現はしたくないけれど)お決まりの流れで、町に失業者があふれて、生きていくために犯罪を犯す人が増えて、治安が悪化します。そして、お金を持っている人が(犯罪に巻き込まれる不安から)国外に逃れ、お金のない人たちが国外に出ていく(非合法の仕事をする可能性あり)、という形が出来てしまいます。
早く次の衣料品の輸出先を探さないと2、3年で大変なことになりそうですね。無責任で申し訳ないですが、日本の会社が少しでも購入できないのですかね。