ボツワナ共和国は、ダイヤモンドを多く産出することで有名だと思います(一部界隈で、ですが)。そしてこのダイヤモンドで国を成長させることができた理由として、De Beers(以下デビアス)社とボツワナ政府が一緒になって鉱業を続けてきているからです。今回は、デビアス社の最近の事情について少しお話ししたいと思います。
始めに、デビアス社が人工ダイヤモンドからの撤退を発表しました。
デビアス社は、米ラスベガスでのジュエリーショーで、6年にわたるlab-grown diamond(要は人工のダイヤモンド)の生産を止める。理由は、人工ダイヤモンドから利益がほとんど出なくなったから。(引用部を意訳)
De Beers to Stop Producing Lab-Grown Diamonds for Jewelry
https://rapaport.com/news/de-beers-to-stop-producing-lab-grown-diamonds-for-jewelry/
デビアス社はボツワナや南アフリカで天然ダイヤモンドを採掘しています。同時に人工ダイヤモンド(合成ダイヤモンド)を生産していたようです。後者に関しては、ちゃんとした装置があれば実験室みたいな場所で製造できてしまうので、安く作れてしまいます。ちなみに、ダイヤモンドは炭素で出来ているので、ある程度の量の石墨(グラファイト)があれば合成可能です。
デビアス社が人工ダイヤモンドに手を出したのは、失敗だったと思っています。人の手によって生み出されたものではなく、地球からの贈り物としての天然ダイヤモンドを採掘・販売を続けていて、その継続していた部分が若干ぶれてしまったからです。会社として収入の流れを多角化したかったのは想像できます。ただ結果的に、撤退せざるをえなかった事を考えると、見通しが甘かったのかなと感じてしまいます。なお、私は決して、工業用の合成ダイヤモンドそのものを否定しているわけではありませんので、そこは誤解なさらないようにお願い致します。
もう1つ、ボツワナのニュースサイトで以下の記事がありました。
ダイヤモンド原石の生産は1330万カラット(注:昨年度と思われます)に減少した。この減少は(中略)ダイヤモンド原石の弱い需要に対応している(引用部意訳)
DE Beers on track with $100 million cost cutting exercise
https://www.mmegi.bw/business/de-beers-on-track-with-100-million-cost-cutting-exercise/news
宝飾品の写真で見るようなピカピカに磨き上げられたものが取れるものを思ってしまうかもしれませんが、鉱山で最初に取れるのは、磨かれる前のダイヤモンド「原石」です。この原石がオークションで販売されて、それを落札した企業がきれいに成型し、最終的には消費者の目に留まる、という流れで、ダイヤモンドは鉱山から私たちの目に触れます。しかし現在、この流通における中流域(ざっくり言うと成型する過程のところ)でダイヤモンドが過剰になっています。実際、この供給過多について、昨年後半に、インドがダイヤモンドの輸入を2か月間停止したほどです。
残念ながら、ダイヤモンドを買ってくれる消費者が多いアメリカや中国の景気が低迷しているので、仮にこの供給過多の状態がなくなったところで、デビアス社の苦闘はまだ続くと思われます。仮に中東のお金持ちの方々がダイヤモンドに興味を持ってくれれば、1年後には回復基調にのるかもしれませんが、それはあまりにも楽観的な予測なので(彼らは基本的にゴールドが好きなはず)、2025/26期いっぱいまでは苦戦かなと、直観だけで予想してみます。